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通常のテキストと流し込みテキスト

  

Inkscapeが持つ2種類のテキスト

Inkscapeのテキストには、通常のテキストと流し込みテキストの2種類があります。 通常のテキストはレギュラーテキスト、流し込みテキストはフローテキストとも呼ばれます。

通常のテキストでは、入力に応じてバウンディングボックスが自動的に拡張・縮小されます。 つまり、テキストの内容に応じてバウンディングボックスが変形します。 中身に合わせて枠が変形する、ということです。

一方、流し込みテキストでは、他の図形が枠(テキストフレーム)となります。 バウンディングボックスは入力に合わせて広がりますが、枠(テキストフレーム)を超えることはできません。 また、入力したテキストはバウンディングボックスに合わせて自動的に改行されます。 つまり、枠(テキストフレーム)に合わせてテキストが変形します。 枠に合わせて中身が変形する、ということです。

通常のテキスト テキストに合わせて枠が変形する
流し込みテキスト 枠に合わせてテキストが変形する

通常のテキストと流し込みテキストを作成してみよう

通常のテキストと流し込みテキストを使ってみましょう。 まずは、新規ドキュメントを開きます。 新規ドキュメントを開いたら、次にテキストツールに切り替えます

1. テキストツールを選択
1. テキストツールを選択

上図のように画面左部にあるツールボックスからテキストツールを選択します(またはキーボードのT(またはF8)を押します)。

では、通常のテキストを作成しましょう。 キャンバス上の任意の場所をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でクリックします

  
ドラッグではなくクリックしてください。 ドラッグしてしまうと、流し込みテキストが作成されてしまいます
2. クリック
2. クリック

上図のように作成したいテキストの左下の位置ををクリックします。

3. テキストカーソル
3. テキストカーソル

上図のようにテキストカーソルが表示されます。 キーボードから文字入力が可能な状態になっていますので、好きな文字を入力しましょう(今回の例では "クリックしたので通常のテキストが作成されます。" と入力します)。

4. "クリックしたので通常のテキストが作成されます。"と入力
4. "クリックしたので通常のテキストが作成されます。"と入力

上図のようにテキストを入力します。 ただし、見ての通り文字が小さくてよく見えません。 フォントサイズを大きくしましょう

5. フォントサイズを 18 に変更する
5. フォントサイズを 18 に変更する

上図のように画面上部にあるツールコントロールでフォントサイズを 18 に変更します。

6. 文字が見やすくなった
6. 文字が見やすくなった

上図のように文字が大きくなって見やすくなりました。 なお、テキストを囲んでいる破線の枠がバウンディングボックスです

ではここで、途中に改行を入れてみましょう(今回の例では "クリックしたので" の後に改行を入れます)。

7. テキストカーソルを改行したい位置に移動する
7. テキストカーソルを改行したい位置に移動する

上図のようにテキストカーソルを改行したい位置まで移動します。 移動したらEnterキーを押しましょう

8. テキストカーソルの位置で改行される
8. テキストカーソルの位置で改行される

上図のようにテキストカーソルの位置で改行されます。 そして注目すべきなのが、バウンディングボックスがテキストの内容に合わせて変形していることです

では、もう1つ改行を入れてみましょう。 今回は "通常のテキストが" の後に改行を入れます。

9. 3行になったテキスト
9. 3行になったテキスト

上図のようにテキストが3行になります。 また、今回もバウンディングボックスが変形しています。 テキストを収めるのに必要最低限の大きさになっていることがわかります

このように、通常のテキストでは入力したテキストの内容に応じてバウンディングボックスが変化します

では続いて、流し込みテキストを作成してみましょう。 キャンバス上のテキストを作成したい範囲をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でドラッグします

10. テキストを作成したい範囲をドラッグ
10. テキストを作成したい範囲をドラッグ

上図のようにテキストを作成したい範囲をドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

11. テキストフレームとテキストカーソル
11. テキストフレームとテキストカーソル

上図のようにテキストフレームとテキストカーソルが表示されます。 なお、テキストフレームはドラッグした範囲に作成されます。

  
流し込みテキストは、他の図形を枠(テキストフレーム)として、そこにテキストを流し込むためのものです。 今回のようにテキストツールでドラッグすると、その範囲にテキストフレームが作成され、それが枠となります。
  
テキストフレームの右下にある取っ手は、テキストフレームの大きさを調整するためのリサイズハンドルです。

キーボードから文字入力が可能な状態になっていますので、テキストフレームに入りきらない長めの文字を入力してください(今回の例では "ドラッグしたので流し込みテキストが作成されます。" と入力します)。

12. "ドラッグしたので流し込みテキストが作成されます。"と入力
12. "ドラッグしたので流し込みテキストが作成されます。"と入力

上図のようにテキストを入力します。 注目すべきなのが、テキストフレームが赤色に変化したことですテキストがテキストフレームに収まっていない場合は、テキストフレームが赤色になります。

このような場合はテキストフレームを広げるしかありません。 テキストフレームの右下にあるリサイズハンドルをドラッグし、テキストフレームを縦に広げましょう

13. リサイズハンドルをドラッグ
13. リサイズハンドルをドラッグ

上図のようにリサイズハンドルをドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

14. 縦に広がったテキストフレーム
14. 縦に広がったテキストフレーム

上図のようにテキストフレームが縦に広がります。 テキスト全体が表示されており、テキストフレームの色も青色に戻っています

では次に、テキストフレームを横長に変形させてみましょう。

15. リサイズハンドルをドラッグ
15. リサイズハンドルをドラッグ

上図のようにリサイズハンドルをドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

16. 横長に変化したテキストフレーム
16. 横長に変化したテキストフレーム

上図のようにテキストフレームが横長に変化します。 また、バウンディングボックスの形もテキストフレームに合わせて変化していることがわかります

このように、流し込みテキストではテキストフレームの形状に合わせてテキストが自動的に改行されます

最後に、流し込みテキストを通常のテキストに変換する方法を説明しておきます。

17. テキスト(T) -> 流し込み解除(U)を実行
17. テキスト(T) -> 流し込み解除(U)を実行

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"テキスト(T)" -> "流し込み解除(U)"を実行します。

18. 流し込みテキストから通常のテキストに変換
18. 流し込みテキストから通常のテキストに変換

上図のように通常のテキストに変換されます。 テキストフレームが無くなっていることから、通常のテキストであることがわかります。 また、テキストには改行を入れなかったので、1行で表示されています。

  
画面上部のプルダウンメニューの"テキスト(T)" -> "テキストに変換(C)"を実行した場合は、見た目を維持したまま通常のテキストに変換されます。 つまり、変換後の見た目が変わらないように自動的に改行が入れられます。 ただし、Inkscape 0.92系までは動作していたのですが、Inkscape 1.0からは動作しません。

通常のテキストか流し込みテキストかの判別

作成済みのテキストオブジェクトが、通常のテキストなのか、流し込みテキストなのかは画面下部の通知エリアで確認することができます。

選択ツールで確認したいテキストオブジェクトを選択すると、通知エリアにテキストの種類が表示されます。

通知エリア
通知エリア

上図のように通知エリアにテキストの種類が表示されます。 なお、"テキストのシェイプへの流し込み"と表示されているのが流し込みテキストのことです

  

流し込みテキストの利用には注意が必要

流し込みテキストの利用には注意が必要です。 理由は、他のソフトウェアでは扱えない可能性があるためです

すでに説明した通り、InkscapeのドキュメントはSVG形式で保存されます。 SVGは、ウェブの国際標準組織であるW3C(World Wide Web Consortium / ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)によって開発されたオープンな規格です。

SVGにはバージョンがあり、流し込みテキストはSVG 1.2の草案で追加された仕様です。 この草案の仕様に従い、Inkscapeに流し込みテキストの機能が追加されました。

しかしその後、W3CはSVG 1.2を破棄し、現在はSVG 2.0の開発を進めています。 つまり、現時点で最も新しい正式なSVGは、SVG 1.1ということであり、もちろん流し込みテキストの仕様は含まれていません。 よって、Inkscapeの流し込みテキストはSVGの正式な仕様ではないということになります。

  

まとめ

Inkscapeのテキストには、通常のテキストと流し込みテキストの2種類があります。 通常のテキストはレギュラーテキスト、流し込みテキストはフローテキストとも呼ばれます。

テキストツールでクリックすると通常のテキストが作成されます。 通常のテキストでは、テキストの内容に応じてバウンディングボックスが変形します。

テキストツールでドラッグすると流し込みテキストが作成されます。 流し込みテキストでは、ドラッグした範囲に収まるようにテキストが変形します。

なお、そのテキストオブジェクトが通常のテキストなのか流し込みテキストなのかは、通知エリアで確認することができます。

操作/コマンド 説明
[テキストツール]ボタン
(または)
T
(または)
F8
テキストツールを選択する
(テキストツール選択中)
マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)
クリックした位置を基点として通常のテキストを作成する
(テキストツール選択中)
マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)のドラッグ
ドラッグした範囲に流し込みテキストを作成する
(リサイズハンドルを)
マウスの左ボタン(マウスの左ボタン)のドラッグ
テキストフレームの幅・高さを調整する
(画面上部のプルダウンメニュー)
"テキスト(T)" -> "テキストに変換(C)"
流し込みテキストを通常のテキストに変換する
※見た目を維持するための改行が入れられる
(画面上部のプルダウンメニュー)
"テキスト(T)" -> "流し込み解除(U)"
流し込みテキストを通常のテキストに変換する
 
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