この記事では、マスキングの機能について説明します。 マスキングは、他のオブジェクトの明度でオブジェクトの表示上の透明度を調整する機能です。 マスキング用オブジェクトの暗い部分が透明に、明るい部分は不透明になります。

マスキングの機能は、前の記事で説明したクリッピングの機能とよく似た機能です。 クリッピングの機能 + 透明度も調整できる機能がマスキング、という感じでしょうか。
では、マスキングの機能を使ってみましょう。 今回は、カラフルな色のオブジェクトの寄せ集めを文字の形状に切り抜き、さらに左端の文字を透明 → 不透明のグラデーションにします。
では、マスキングされるオブジェクト群とマスキング用オブジェクトであるテキストを用意します。

上図のようにカラフルなオブジェクト群とテキストを用意します。 カラフルなオブジェクト群がマスキングされるオブジェクトで、テキストがマスキング用オブジェクトです。
まずは、マスキングされるオブジェクト群をグループ化します。 グループ化しなくてもマスキングできますが、選択や移動などの管理が楽なのでグループ化します。

上図のようにマスキングされるオブジェクト群を選択します。
では、選択したオブジェクト群をグループ化しましょう。 画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "グループ化(G)"を実行するか、キーボードのCTRL+G(ジー)を押します。

上図のようにマスキングされるオブジェクト群がグループ化されます。
では次に、マスキング用オブジェクトであるテキストの色を設定します。 テキストの左端が黒色で、2文字目の "a" の文字の中間地点で白色になるようにグラデーションをかけます。
まずは、テキストを選択します。

上図のようにテキストを選択します。 では次にグラデーションツールに切り替えます。

上図のように画面左部にあるツールボックスからグラデーションツールを選択します(またはキーボードのCTRL+F1キーを押します)。
続いて、画面上部のツールコントロールでグラデーションの設定を行います。

      上図のようにツールコントロールの "新規:" の[線形グラデーションを作成]ボタン(![[線形グラデーションを作成]ボタン [線形グラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-lineargradient.jpg) )と[フィルのグラデーションを作成]ボタン(
)と[フィルのグラデーションを作成]ボタン(![[フィルのグラデーションを作成]ボタン [フィルのグラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-inthefill.jpg) )を選択します。
)を選択します。
    
"新規:" のボタンの意味は以下の通りです。
| 操作/コマンド | 説明 | 
|---|---|
| ![[線形グラデーションを作成]ボタン [線形グラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-lineargradient.jpg)  | グラデーションツールでドラッグしたオブジェクトに線形グラデーションをかける | 
| ![[放射(楕円または真円)グラデーションを作成]ボタン [放射(楕円または真円)グラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-radialgradient.jpg)  | グラデーションツールでドラッグしたオブジェクトに放射グラデーションをかける | 
| ![[フィルのグラデーションを作成]ボタン [フィルのグラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-inthefill.jpg)  | グラデーションツールでドラッグしたオブジェクトのフィルにグラデーションをかける | 
| ![[ストロークのグラデーションを作成]ボタン [ストロークのグラデーションを作成]ボタン](/images/button_creategradient-inthestroke.jpg)  | グラデーションツールでドラッグしたオブジェクトのストロークにグラデーションをかける | 
つまり、選択中のテキストのフィルに線形グラデーションをかけるという意味になります。
      では、グラデーションをかけましょう。
      選択中のオブジェクトをマウスの左ボタン( )でドラッグすることでグラデーションがかかります。
)でドラッグすることでグラデーションがかかります。
    

上図のようにテキストの左端から2文字目の "a" の中間地点にかけてドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

上図のようにグラデーションがかかります。 なお、グラデーションは、完全不透明の黒色 → 完全透明の黒色となっています。 つまり、このままではマスキング結果は、全て透明になってしまいます。
今回の目的のマスキングをかけるには、完全不透明の黒色 → 完全不透明の白色でテキストを塗る必要があります。 つまり、グラデーションの終点を完全不透明の白色にする必要があります。
ではここで、グラデーションハンドルに注目してください。

上図のようにグラデーションの終点である丸ハンドルが選択されています。 つまり、選択する手間が省けました。
後は、完全不透明の白色をセットするだけです。 画面下部にあるカラーパレットから白色を指定しましょう。

      上図のようにカラーパレットの白色を、マウスの左ボタン( )でクリックします。
)でクリックします。
    

上図のようにグラデーションの終点に完全不透明の白色がセットされます。 背景が白色であるため変化はありませんが大丈夫です。
続いて、念のためにグラデーションの始点にも完全不透明の黒色をセットしておきます。 では、グラデーションの始点を選択しましょう。

      上図のように始点をマウスの左ボタン( )でクリックします。
)でクリックします。
    

上図のように始点が選択されます。 では、カラーパレットから黒色を指定しましょう。

      上図のようにカラーパレットの黒色を、マウスの左ボタン( )でクリックします。
)でクリックします。
    

上図のようにグラデーションの始点に完全不透明の黒色がセットされます。 これまた変化がないですが、大丈夫です。
では続いて、マスキング用オブジェクトであるテキストを移動し、カラフルなオブジェクト群に重ねます。 まずは、選択ツールを選択しましょう。

上図のように画面左部にあるツールボックスから選択ツールを選択します(またはキーボードのS(またはF1キー)を押します)。 では、テキストを移動します。

上図のようにテキストをカラフルなオブジェクト群の上に乗せます。 大切なことは、マスキング用オブジェクトがマスキングされるオブジェクト群よりも前面に配置されていることです。 そうなっていない場合は、キーボードのHomeキーを押してテキストを最前面に移動しましょう。
なお、重ねたことでテキストに狙い通りのグラデーションがかかっていることが確認できました。
これで、マスキングに必要なものが揃いました。 では次に、マスキングされるオブジェクトとマスキング用オブジェクトの両方を選択します。

上図のようにマスキングされるオブジェクトとマスキング用オブジェクトを選択します。
これでマスキングの準備が完全に整いました。 では、実際にマスキングをかけましょう。

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "マスク(K)" -> "マスクを設定(S)"を実行します。

上図のようにカラフルなオブジェクト群がマスキングされます。 テキストの形状に切り抜かれ、左端から "a" の文字の中間地点にかけてグラデーションがかかっています。
なお、正確に言えば文字の形状に切り抜かれたわけではなく、文字のない部分が完全透明になっただけです。 マスキングでは、マスキング用オブジェクトの黒色の部分が透明に、白色の部分が不透明になるだけでなく、マスキング用オブジェクトの何もない部分も透明になります。 マスキング用オブジェクトの何もない部分が透明になったため、切り抜いたように見えるだけです。
また、わかりにくですが最前面にあったマスキング用オブジェクトが消えています。 このように、マスキングが有効な間はマスキング用のオブジェクトは表示されなくなります。
ではここでノードツールに切り替えてみましょう。

上図のように画面左部にあるツールボックスからノードツールを選択します(またはキーボードのN(またはF2キー)を押します)。 ノードツールに切り替えたら、カラフルなオブジェクトの表示されていない部分にマウスカーソルを乗せましょう。

上図のようにマウスカーソルを非表示のパスに乗せると、少しの間だけパスのアウトラインが赤色で表示されます。
      では、非表示のパスをマウスの左ボタン( )でクリックしてみましょう。
)でクリックしてみましょう。
    

上図のように非表示のパスが編集可能な状態になります。 このように、非表示のパスは切り抜かれたわけではく、表示上透明になって見えないだけです。
では次に、"M" の文字の部分がグラデーションになっていることを確認してみましょう。 下位に赤色の矩形のオブジェクトを置くことで確認します。

上図のように画面左部にあるツールボックスから矩形ツールを選択します(またはキーボードのR(またはF4キー)を押します)。
      では、矩形を作成します。
      作成したい矩形の対角線をマウスの左ボタン( )でドラッグします。
)でドラッグします。
    

上図のようにテキストを囲むようにドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

上図のように矩形のシェイプが作成されます。 色が黒色なので赤色に変更します。 画面下部にあるカラーパレットから赤色を指定しましょう。

      上図のようにカラーパレットの赤色を、マウスの左ボタン( )でクリックします。
)でクリックします。
    

上図のように矩形のフィルに赤色がセットされます。 ストロークはそのままでいいでしょう。
では、キーボードのEndキーを押して赤色の矩形を最背面に移動しましょう。

上図のように "M" の文字の左側では赤色が透けているのがわかります。 "M" の文字の部分がグラデーションになっていることが確認できました。
では、不要になった赤色の矩形を削除します。 まずは、選択ツールに切り替えましょう。

上図のように画面左部にあるツールボックスから選択ツールを選択します(またはキーボードのS(またはF1キー)を押します)。
選択ツールに切り替えたら、赤色の矩形を選択します。

上図のように赤色の矩形を選択します。 選択したら、キーボードのDeleteキーを押して削除しましょう。

上図のように赤色の矩形が削除されます。
では最後に、マスキングを解除する手順を説明します。 選択ツールのままで、マスキングされているオブジェクト、つまり今回はカラフルなオブジェクト群を選択します。

上図のようにカラフルなオブジェクト群を選択します。
では、マスキングを解除しましょう。

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "マスク(K)" -> "マスクを解除(R)"を実行します。

上図のようにマスキングが解除されます。 マスキング前の状態に戻っていることがわかります。
マスキングは、他のオブジェクトの明度でオブジェクトの透明度を調整する機能です。 マスキング用オブジェクトの暗い部分が透明に、明るい部分は不透明になります。 なお、マスキング用オブジェクトの何もない部分は透明になるため、切り抜かれたような効果も得られます。
マスキング用オブジェクトは、マスキングされるオブジェクト群よりも前面に配置する必要があります。 マスキングされるオブジェクトとマスキング用オブジェクトの両方が準備できたらそれらを選択し、プルダウンメニューからマスキングを実行します。
| 操作/コマンド | 説明 | 
|---|---|
| (画面上部のプルダウンメニュー) "オブジェクト(O)" -> "マスク(K)" -> "マスクを設定(S)" | 選択中の最上位のオブジェクトで他の選択中のオブジェクトをマスキングする | 
なお、マスキングが有効な間はマスキング用オブジェクトは表示されず、選択することもできなくなります。
マスキングを解除するにはマスキングされているオブジェクトを選択し、プルダウンメニューからマスキング解除を実行します。
| 操作/コマンド | 説明 | 
|---|---|
| (画面上部のプルダウンメニュー) "オブジェクト(O)" -> "マスク(K)" -> "マスクを解除(R)" | 選択中のオブジェクトのマスキングを解除する |