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レイヤのブレンドモード・ぼかし・不透明度について

  

レイヤのブレンドモード・ぼかし・不透明度

前の記事では、レイヤの使い方について一通り説明しました。 ただし、まだ説明できていない重要なレイヤ関連の機能があります。 それが『ブレンドモード』・『ぼかし』・『不透明度』です。 この記事ではそれらの機能について詳しく解説します。

まずは、ブレンドモードから解説します。 ブレンドモードとは、レイヤをどのように重ね合わせるかを指定するものです。 Inkscape特有の機能ではなく、本格的なペイント系ソフトウェアやドロー系ソフトウェアであれば必ずと言っていいほど搭載されている機能です。

すでに説明したようにレイヤには上下関係があり、上位のレイヤが下位のレイヤを覆い隠します。 ブレンドモードを変更することで、単純に覆い隠すのではなく、上位と下位の明るい部分だけを抽出するなどの計算を行わせることができます

では、実際にブレンドモードを切り替えてみましょう。 サンプルとして以下のようなレイヤ構成の画像を使用します。 上層の "花" レイヤに花のオブジェクトが、下層の "クマ" レイヤにクマのオブジェクトが配置されています。

 

では、画像を開きましょう。

1. 画像を開く
1. 画像を開く

上図のように画像を開きます。 上層の "花" レイヤと下層の "クマ" レイヤで構成されている画像です。 見ての通り、上層の花が下層のクマを覆い隠しています。 このように、上位のレイヤが下位のレイヤを覆い隠すのが初期のブレンドモードである、標準モードです。

では、ブレンドモードを変更しましょう。 今回は、初期状態の標準モードからオーバーレイモードに変更します。 なお、下層の "クマ" レイヤのブレンドモードは標準モードのままとし、上層の "花" レイヤのブレンドモードをオーバーレイモードに切り替えます。

まずは、操作対象となる "花" レイヤを選択する必要があります。 レイヤの選択は、レイヤーとオブジェクトダイアログで実施します。 ただし、画面上部のプルダウンメニューからではなく、別の方法でレイヤーとオブジェクトダイアログを開いてみましょう。

2. レイヤ情報欄の[現在のレイヤー]ボタンを押す
2. レイヤ情報欄の[現在のレイヤー]ボタンを押す

上図のようにレイヤ情報欄の[現在のレイヤー]ボタンを押します。

3. レイヤーとオブジェクトダイアログが開く
3. レイヤーとオブジェクトダイアログが開く

上図のようにレイヤーとオブジェクトダイアログが開きます。 このように、レイヤ情報欄の[現在のレイヤー]ボタンを押すことでもレイヤーとオブジェクトダイアログを開くことができます。

  
Inkscape 1.2系で "レイヤーダイアログ" と "オブジェクトダイアログ" が統合され、新たに "レイヤーとオブジェクトダイアログ" になりました。

ではここで、レイヤとオブジェクトの一覧に注目してください

4. 2つのレイヤがある
4. 2つのレイヤがある

上図のように上層の "花" レイヤと下層の "クマ" レイヤの2つのレイヤが存在することがわかります。 そのようなレイヤ構成の画像を開きましたから、まあ当然ですね。

では、上層の "花" レイヤを選択しましょう。

5. レイヤとオブジェクトの一覧の "花" レイヤをクリック
5. レイヤとオブジェクトの一覧の "花" レイヤをクリック

上図のようにレイヤとオブジェクトの一覧の "花" レイヤをマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でクリックします。

6. "花" レイヤが選択される
6. "花" レイヤが選択される

上図のようにクリックした "花" レイヤが選択されます。

これで、"花" レイヤを選択することができました。 レイヤーとオブジェクトダイアログはもう不要ですので閉じましょう。

7. レイヤーとオブジェクトダイアログを閉じる
7. レイヤーとオブジェクトダイアログを閉じる

上図のようにレイヤーとオブジェクトダイアログのタブの[X]ボタン([X]ボタン)を押し、ダイアログを閉じます。

次に、選択中の "花" レイヤのブレンドモードを変更します。 レイヤのブレンドモードは、フィル/ストロークダイアログで設定します

  
Inkscape 1.0系 / 1.1系では、レイヤのブレンドモード・ぼかし・不透明度はレイヤーダイアログで、オブジェクトのブレンドモード・ぼかし・不透明度はフィル/ストロークダイアログで設定していました。 Inkscape 1.2系からは、レイヤ・オブジェクトともに、フィル/ストロークダイアログでブレンドモード・ぼかし・不透明度を設定します。 つまり、設定場所が統一されました。
8. オブジェクト(O) -> フィル/ストローク(F)...を実行
8. オブジェクト(O) -> フィル/ストローク(F)...を実行

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "フィル/ストローク(F)..."を実行します(またはキーボードのSHIFT+CTRL+Fを押します)。

9. フィル/ストロークダイアログが開く
9. フィル/ストロークダイアログが開く

上図のようにフィル/ストロークダイアログが開きます。

では、ブレンドモードを変更しましょう。

10. ブレンドモードをオーバーレイに変更する
10. ブレンドモードをオーバーレイに変更する

上図のようにフィル/ストロークダイアログの下部にあるブレンドモードをオーバーレイに変更します。

11. "花" レイヤの明るい部分がより明るくなる
11. "花" レイヤの明るい部分がより明るくなる

上図のように "花" レイヤの明るい部分がより明るくなります。 なお、オーバーレイは、上層の明るい部分はより明るく合成され、上層の暗い部分はより暗く合成されるモードです

  
ブレンドモードについてはこの記事の後半で詳しく説明します。

次に、『ぼかし』の機能を使ってみましょう。 『ブレンドモード』と同じくフィル/ストロークダイアログで設定します。

12. ブレンドモードを標準に戻し、不透明度を 50.0 に変更する
12. ブレンドモードを標準に戻し、不透明度を 50.0 に変更する

上図のように(1)のブレンドモードを標準に戻し、(2)のぼかし を 25.0 に変更します。

13. 花にぼかしがかかる
13. 花にぼかしがかかる

上図のように花にぼかしがかかります。 正確には、"花" レイヤに配置されている全てのオブジェクトにぼかしがかかります。


続いて、不透明度を変更してみましょう。

14. ぼかしを 0.0 に戻して不透明度を 50.0 に変更する
14. ぼかしを 0.0 に戻して不透明度を 50.0 に変更する

上図のように(1)の ぼかし を 0.0 に戻し、(2)の不透明度を 50.0 に変更します。

15. "花" レイヤが半透明になる
15. "花" レイヤが半透明になる

上図のように "花" レイヤが半透明になり、下位の "クマ" レイヤの内容が透けています。 このように、レイヤ全体の不透明度が変更されます。 不透明度が 100% で完全不透明になり、0% で完全透明になります。

  

各ブレンドモードの紹介

Inkscapeには、16種類のブレンドモードが用意されています。 それぞれについて、もう少し詳しく説明します。

使用する画像は先ほどと同じ以下の画像です。 上層のレイヤが花の画像で、下層のレイヤがクマの画像です。

 

上層のレイヤのブレンドモードに16種類ぞれぞれを設定した場合の例を以下に掲載します。 なお、下層のレイヤのブレンドモードは標準モードから変えません

標準モード

上層レイヤが下層レイヤを覆い隠すブレンドモードです。 レイヤの初期のブレンドモードであり、特に難しいことはありません。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
標準モードでは、上層レイヤが下層レイヤを覆い隠します。

乗算モード

上層レイヤの色と下層レイヤの色を乗算して255で割るブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤがそのまま透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
乗算モードでは、特定の範囲だけを対象に暗くすることができます。 暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置し乗算モードで合成します。

スクリーンモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
スクリーンモードでは、特定の範囲だけを対象に明るくすることができます。 明るくしたい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置しスクリーンモードで合成します。

比較(暗)モード

上層レイヤと下層レイヤのピクセルを比較し、暗い方のピクセルを採用するブレンドモードです。 上層レイヤと下層レイヤから暗い部分を寄せ集めた結果になります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
比較(暗)モードでは、暗い部分だけを集めることができます。 夜間に撮影した写真から暗い部分だけを合成するのに便利です。
  
例えば、夜間の都会の道路で車やバイクが全く写っていない写真を見たことがないでしょうか。 そのような写真は、三脚で固定して撮影された複数枚の写真を比較(暗)モードで合成したものです。 交通規制して撮影したわけでも、運良く車やバイクが通っていなかったわけでもなく、比較(暗)モードで合成してヘッドライトやテールランプの光跡を消しているのです。

比較(明)モード

上層レイヤと下層レイヤのピクセルを比較し、明るい方のピクセルを採用するブレンドモードです。 上層レイヤと下層レイヤから明るい部分を寄せ集めた結果になります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
比較(明)モードでは、明い部分だけを集めることができます。 夜間に撮影した写真から明るい部分だけを合成するのに役立ちます。
  
例えば、道路を行き交う車のヘッドライトやテールランプの光跡、森を埋め尽くすようなホタルの光、流れるような夜空の星などです。 誰でも一度は見たことのあるそれらの写真は、三脚で固定して撮影された複数枚の写真を比較(明)モードで合成したものです。

オーバーレイモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

  
このブレンドモードでは、下層レイヤの色によって乗算またはスクリーンと同じ計算が行われます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
オーバーレイモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置してオーバーレイモードで合成します。

覆い焼きカラーモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るさとコントラストを強調されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
覆い焼きカラーモードでは、特定の範囲だけを対象に明るさとコントラストを強調することができます。 明るさとコントラストを強調したい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置し覆い焼きカラーモードで合成します。
  
本来、覆い焼きというのは、銀塩写真のプリント作業で使われる手法のことで、露出不足で黒つぶれした部分を明るくすることを指します。 印画紙の一部を覆うことで露光を減らし、結果その部分を明るく仕上げます。

焼き込みモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤがそのまま透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗さとコントラストを強調されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
焼き込みモードでは、特定の範囲だけを対象に暗さとコントラストを強調することができます。 暗さとコントラストを強調したい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置し焼き込みモードで合成します。
  
本来、焼き込みというのは、銀塩写真のプリント作業で使われる手法のことで、露出過多で白飛びした部分を暗くすることを指します。 印画紙の一部の露光を増やし、その部分を暗く仕上げます。

ハードライトモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

  
このブレンドモードでは、上層レイヤの色によって乗算またはスクリーンと同じ計算が行われます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
ハードライトモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置しハードライトモードで合成します。

ソフトライトモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
ソフトライトモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置してソフトライトモードで合成します。
  
Inkscape 0.92系のソフトライトモードは正常に動作しませんでした。 ソフトライトモードを選択しても、標準モードと同じ結果になっていました。 しかし、Inkscape 1.0以降は正常に動作します。

差分モード

上層レイヤの色と下層レイヤの色の差分を求めるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが階調反転されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
差分モードでは、上層レイヤと下層レイヤの差分を求めることができます。 例えば、修正前の写真と修正後の写真を重ねて差分モードで合成することで、修正された部分のみを表示させることができます。
  
差分モードでは、特定の範囲だけを対象に階調反転することもできます。 階調反転したい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置し差分モードで合成します。

排他モード

上層レイヤの色から下層レイヤの色を除外するブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが階調反転されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
排他モードでは、差分モードと似た結果が得られます。 ただし、コントラストは弱くなります。

色相モード

上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成するブレンドモードです。 上層レイヤの彩度が0の場合は下層レイヤの色相が使われます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
色相モードでは、上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することができます。

彩度モード

上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成するブレンドモードです。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの鮮やかさを調整することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
彩度モードでは、上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの鮮やかさを調整することができます。

色モード

上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成するブレンドモードです。 上層レイヤで下層レイヤを着色することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
色モードでは、上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することができます。

輝度モード

上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成するブレンドモードです。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの明るさ調整することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
輝度モードでは、上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの明るさを調整することができます。
  

まとめ

それぞれのレイヤにはブレンドモードを設定することができます。 ブレンドモードは下位のレイヤとの合成方法で、以下のものが用意されています。

モード 効果
標準 上層レイヤが下層レイヤを覆い隠す
乗算 特定の範囲だけを対象に暗くする
スクリーン 特定の範囲だけを対象に明るくする
比較(暗) 暗い部分だけを集める
比較(明) 明い部分だけを集める
オーバーレイ 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
覆い焼きカラー 特定の範囲だけを対象に明るさとコントラストを強調する
焼き込み 特定の範囲だけを対象に暗さとコントラストを強調する
ハードライト 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
ソフトライト 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
差分 上層レイヤと下層レイヤの差分を求める
排他 上層レイヤから下層レイヤを除外する
色相 上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成する
彩度 上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成する
上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成する
輝度 上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成する
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