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オブジェクトのスナップ(吸い寄せ)

  

オブジェクトを他のオブジェクトやグリッドに吸い寄せる

この記事では、オブジェクトのスナップの機能について説明します。 スナップとは吸い寄せのことで、オブジェクトの移動や変形の操作の際に他のオブジェクトやグリッドなどに吸着させることができます

 

スナップされる対象もスナップ先となる対象も、かなり細かく指定することができます。 つまり、『何をどこに吸着させるか』の『何を』も『どこに』も、細かく指定できるということです

SHIFTキーを押している間はスナップが一時的に無効になる

SHIFTキーを押している間は一時的にスナップが無効になります。 覚えておきましょう。

Inkscape 1.2系から利用方法が変わった

スナップの機能は、Inkscape 1.2系から利用方法が変わりました。 簡易スナッピングモードと上級者モードの2つが用意され、利用者は自由にそれらのモードを切り替えることができるようになりました

インストール直後は簡易スナッピングモードになっており、簡単なスナップ設定しか使えません。 上級者モードに切り替えることで、細かなスナップ設定が行えるようになります。 なお、上級者モードのスナップ設定の項目は、Inkscape 1.1系よりも少し多くなっています。

  
スナップの機能は、Inkscapeの中でもかなり難解な機能です。 あまりにも細かな設定が行えるため、簡単には理解できないという問題がありました。 つまり、高機能すぎて使い方がわからない、という利用者が多かったのです。 その問題を解消するため、簡易スナッピングモードが用意されたようです。

まずは上級者モードに切り替える

これからスナップの機能について説明しますが、まずはスナップの機能そのものを有効にし、さらに上級者モードに切り替えましょう。

1. ツールコントロールの[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタンを押す
1. ツールコントロールの[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタンを押す

上図のように画面上部にあるツールコントロールの[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン([スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン)を押します(またはキーボードの%を押します)。 これで、スナップの機能そのものが有効になります

次に、上級者モードへの切り替えを行います

2. ツールコントロールの[スナップ設定パネル]ボタンを押し上級者モードに切り替える
2. ツールコントロールの[スナップ設定パネル]ボタンを押し上級者モードに切り替える

上図のように画面上部にあるツールコントロールの(1)の[スナップ設定パネル]ボタン([スナップ設定パネル]ボタン)を押します。 スナップ設定パネルが表示されますので(2)の上級者モードをクリックします

3. 上級者モードに切り替わる
3. 上級者モードに切り替わる

上図のように上級者モードに切り替わります。 これで、細かなスナップ設定が行えるようになりました。

色々とスナップさせてみる

では、実際にオブジェクトをスナップさせてみましょう。

1. 2つの矩形と1つの楕円
1. 2つの矩形と1つの楕円

上図のように2つの矩形のシェイプと1つの楕円のシェイプを作成します。

次に、グリッドを表示します。 グリッドとは、オブジェクトを吸い寄せるために使える格子状の線のことです

2. 表示(V) -> ページグリッド(G)を実行
2. 表示(V) -> ページグリッド(G)を実行

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"表示(V)" -> "ページグリッド(G)"を実行します(またはキーボードのSHIFT + #を押します)。

3. グリッドが表示される
3. グリッドが表示される

上図のようにキャンバス上にグリッドが表示されます。 なお、このグリッドは省略表示されています。

初期設定では、グリッドは1ピクセル間隔で引かれるように設定されています。 ただし、通常の表示倍率で1ピクセルごとに線を引いてしまうと線で埋め尽くされてしまいます。

そのためInkscapeでは、表示倍率に応じてグリッドの表示を最適化しています。 例えば、20本に1本だけ表示する、という具合です。

では次にグリッドの間隔を変更します。 グリッドの間隔はドキュメントのプロパティで指定します。

4. ファイル(F) -> ドキュメントのプロパティ(D)...を実行
4. ファイル(F) -> ドキュメントのプロパティ(D)...を実行

上図のように画面上部のプルダウンメニューの"ファイル(F)" -> "ドキュメントのプロパティ(D)..."を実行します(またはキーボードのSHIFT + CTRL + Dを押します)。

5. ドキュメントのプロパティウィンドウ
5. ドキュメントのプロパティウィンドウ

上図のようにドキュメントのプロパティウィンドウが開きますので、『グリッド』タブをクリックします

6. X方向・Y方向の間隔をそれぞれ200pxに
6. X方向・Y方向の間隔をそれぞれ200pxに

上図のように『グリッド』タブに切り替わります。 (1)のグリッドの単位(U)を px に、(2)のX方向の間隔(X)とY方向の間隔(Y)にそれぞれ 200 を設定します。

設定したらダイアログのタブの(3)の[×]ボタン([×]ボタン)を押してダイアログを閉じましょう

7. グリッドの間隔が200ピクセルになる
7. グリッドの間隔が200ピクセルになる

上図のようにグリッドの間隔が200ピクセルになります。 なお、グリッドは省略表示はされておらず、全ての線が表示されています。 さすがに200ピクセルだと、よほど表示倍率が小さくなければ省略表示されることはありません

  
説明のためにグリッドの間隔を200に設定しましたが、ほとんどの場合で、グリッド間隔は初期値の1ピクセルのままがオススメです。 表示倍率に応じてグリッドの表示が最適化されるためです。

続いて、スナップの設定を行います。 スナップの設定は、スナップ設定パネルから行います。 スナップ設定パネルは、画面上部にあるツールコントロールの[スナップ設定パネル]ボタン([スナップ設定パネル]ボタン)を押すと表示されます。

8. スナップ設定パネルのチェックボックスは"スナップを有効"のみオン
8. スナップ設定パネルのチェックボックスは"スナップを有効"のみオン

上図のようにスナップ設定パネルのチェックボックスは "スナップを有効" のみオンにし、他のチェックボックスはオフにしておきます

  
下位のチェックボックス(例:"エッジ" / "角" / "辺の中央" / "中央")は、上位のチェックボックス(例:"境界枠")を有効にしないとオン/オフできない場合があります。

"スナップを有効" は、スナップの機能の有効/無効を切り替えるチェックボックスです。 画面上部にあるツールコントロールの[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン([スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン)と連動しています。

では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみてください

9. どこにもスナップされない
9. どこにもスナップされない

上図のようにシェイプはどこにもスナップされません。 スナップされない理由は、『何をどこに吸着させるか』の『何を』と『どこに』の両方ともが設定されていないからです。

スナップの機能は有効ですが、スナップされる対象もスナップ先となる対象も存在しないということです

次に、境界枠関連のスナップを有効にします。 なお、境界枠とはバウンディングボックスのことです。

  
バウンディングボックスとは、オブジェクトを囲む最小の矩形の枠のことです。 矩形(くけい) 矩形(くけい) とは全ての角が90度の四角形のこと、つまり正方形か長方形のことです。
10. "境界枠"をオン
10. "境界枠"をオン

上図のように "境界枠" をオンにします。 では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみましょう

11. どこにもスナップされない
11. どこにもスナップされない

上図のようにシェイプはどこにもスナップされません。 なぜスナップされないのでしょうか。 理由は、"境界枠" は、バウンディングボックス関連のスナップの機能の有効/無効を切り替えるだけだからです。

つまり、『何をどこに吸着させるか』の『何を』も『どこに』も、いまだ設定されてはいないということです。 では、『何を』と『どこに』を設定してみましょう

12. "角" をオン
12. "角" をオン

上図のように "角" をオンにします。 このチェックボックスをオンにすると、バウンディングボックスの角がスナップ対象になります。 なお、スナップされる対象でもあり、スナップ先となる対象でもあります

つまり、『何を』と『どこに』の両方の対象に、バウンディングボックスの角が加わりました。 では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみましょう

13. 矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの角にスナップされる
13. 矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの角にスナップされる

上図のように矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの角にスナップされます。 つまり、バウンディングボックスの角同士が吸着されました

  
スナップされた位置には少しの間だけ赤色の×が表示されます

では次にバウンディングボックスの角のスナップを無効にし、バウンディングボックスの辺のスナップを有効にします。

14. "角" をオフ / "エッジ" をオン
14. "角" をオフ / "エッジ" をオン

上図のように "角" をオフにし、"エッジ" をオンにします。

では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみましょう

15. どこにもスナップされない
15. どこにもスナップされない

上図のようにシェイプはどこにもスナップされません。 なぜスナップされないのかというと、"エッジ" は、バウンディングボックスの辺をスナップ先となる対象にはしますが、スナップされる対象にはしないためです。

つまり、バウンディングボックスの辺は『どこに』の対象にだけ加わり、『何を』の対象には加わっていないのです

ではここで、再びバウンディングボックスの角をスナップの対象に加えましょう。

16. "角" をオン
16. "角" をオン

上図のように "角" をオンにします。

では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみましょう

17. 矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの辺にスナップされる
17. 矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの辺にスナップされる

上図のように矩形のバウンディングボックスの角が楕円のバウンディングボックスの辺にスナップされます。 このようにバウンディングボックスの辺は『どこに』の対象にはなりますが、『何を』の対象にはなりません

次に、バウンディングボックスの辺のスナップを無効にし、グリッドへのスナップを有効にします。

18. "エッジ" をオフ / "グリッド" をオン
18. "エッジ" をオフ / "グリッド" をオン

上図のように "エッジ" をオフにし、"グリッド" をオンにします。

では、赤色の矩形のシェイプをマウスで動かしてみましょう

19. バウンディングボックスの角がグリッドにスナップされる
19. バウンディングボックスの角がグリッドにスナップされる

上図のようにバウンディングボックスの角がグリッドにスナップされます。

このように、Inkscapeのスナップの設定はやや難解です。 チェックボックスによっては、『どこに』の対象にはなるが『何を』の対象にはならない、というものがあるためです

次の記事へ

では、そろそろ一区切りします。 続きは次の記事を参照ください

  
  

まとめ

スナップとは吸い寄せの機能のことで、ガイドやグリッドおよび他のオブジェクトにピッタリと寄せることができます。

グリッドは表示・非表示を切り替えることができ、線の間隔はドキュメントのプロパティウィンドウで設定することができます。

操作/コマンド 説明
SHIFT + # グリッドの表示/非表示を切り替える
SHIFT + CTRL + D ドキュメントのプロパティウィンドウを開く

スナップは、画面上部にあるツールコントロールの[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン([スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン)で有効/無効を切り替えることができます(またはキーボードの%を押します)。

操作/コマンド 説明
[スナップの有効/無効を切り替えます]ボタン
(または)
%
スナップの有効/無効を切り替える

スナップの動作は、スナップ設定パネルで設定することができます。 スナップ設定パネルは、画面上部にあるツールコントロールの[スナップ設定パネル]ボタン([スナップ設定パネル]ボタン)を押すと表示されます。 スナップ設定パネルのチェックボックスの意味は以下の通りです。

操作/コマンド 説明
エッジ バウンディングボックスの辺
バウンディングボックスの角
グリッド グリッド
※グリッドが表示されている時だけ

なお、SHIFTキーを押している間は一時的にスナップが無効になります。

操作/コマンド 説明
(オブジェクトの移動中)
SHIFTキー
一時的にスナップを無効にする
 
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